知らない人と話していると、どこかで意見が食い違います。働き方、家族との距離、住んでいる場所の事情、お金の使い方。相手の言葉に対して「自分はそうは思わない」と感じる瞬間が来ます。
そこで会話はたいてい二つに分かれます。黙って話題を変えるか、言い返して空気が固くなるか。どちらも少し惜しいと思います。意見が分かれる場所は、その会話の中でいちばん中身の濃いところだからです。
反論したくなるとき、何が起きているか
言い返したくなる瞬間、頭の中では相手の発言がひとまとめに「間違い」として扱われています。ところが実際に自分と違っているのは、多くの場合その一部分です。
たとえば相手が「会社に毎日行かないと仕事は回らない」と言ったとします。自分は在宅で問題なく働いている。ここで対立しているように見えて、ずれているのは次のどれかです。
- 職種や業種の前提が違う
- 「回る」という言葉の意味が違う
- 相手が過去に見てきた具体的な例が違う
- 本当に価値観として対立している
四つ目であることは、意外と少ないです。最初の三つなら、話せば話すほど互いの見え方が広がります。
どこが違うのかを先に見つける
そこで役に立つのは、賛成も反対もいったん保留して、違いの場所を探す質問です。
- 具体例を聞く。「それを強く感じたのは、どんな場面でしたか」
- 言葉の意味を確かめる。「回らない、というのは連絡が遅れるような感じですか」
- 範囲を確かめる。「それはどの仕事でも、ということですか」
この三つを挟むと、たいてい相手の発言は最初より細かく、具体的になります。そして自分の反対意見も、最初に言おうとしていたものとは違う形になっているはずです。
「でも」を後ろに回す
相手の話を受けてすぐ「でも」と続けると、直前の部分は聞き流されたと受け取られます。順番を変えて、まず自分が理解した内容を一文で確認し、そのあとで自分の見え方を置くだけで、印象はかなり変わります。
自分の意見は、根拠ごと出す
結論だけを短く言うと、会話は勝ち負けに近づきます。「そうは思いません」ではなく、「自分は三年ほど在宅で働いていて、そこではこうでした」と経験を添えると、相手はそれを反対意見ではなく情報として扱えます。
そのうえで、自分の考えがどこまで通用するかも自分で言ってしまうのが有効です。「ただ、うちは人数が少ないので、大きな組織だと違うかもしれません」。こう置くと、相手は反論する代わりに、その続きを埋めてくれることが多いです。
一致しないまま終えてよい
知らない人との会話には、結論を出す義務がありません。どちらかが考えを変える必要もありません。「なるほど、そういう見方があるんですね」で止めて、別の話に移っても構いません。
むしろ、違いをはっきりさせたまま穏やかに終われた会話は、記憶に残ります。相手を説得できたかどうかではなく、自分の中の地図が少し書き換わったかどうか。そこを目安にすると、意見の食い違いは避けるものではなく、待ってもいいものになります。