うなずきだけでは、聞いていることは伝わらない
初対面の相手が少し長めに話したとき、多くの人は「なるほど」「へえ」「そうなんですね」と返します。礼儀としては十分ですが、これらの言葉には中身がありません。相手の側から見ると、話したことがどう受け取られたのか分からないまま、話題が次へ流れていきます。何度かそれが続くと、人は自然と話を短くします。「この人は表面だけ聞いている」と感じるからです。
そこで役に立つのが、相手の話を自分の言葉に置き換えて返すことです。「つまり、引っ越しのたびに友達を作り直してきたということですね」。この一言は、内容を理解したという証拠になります。証拠が渡された相手は、安心してもう一段深い話に進めます。会話が深くなるのは、こちらが上手な質問を用意したからではなく、相手が続きを話しても大丈夫だと判断したからです。
言い換えの組み立て方
手順は三つだけです。
- 核を一つ選ぶ。相手が話した中で、いちばん比重の重そうな部分を見つけます。事実より、その人の選択や困りごとに近い部分です。
- 自分の言葉に置き換える。相手の使った単語をそのまま並べ直すのではなく、別の表現で言い直します。ここで理解の度合いが試されます。
- 確認の余地を残す。「ということですか」「そんな感じですか」と少し開いた形で終えると、違っていた場合に相手が直せます。
たとえば相手が「転職して三か月、まだ誰にも仕事を頼めていない」と言ったとします。「三か月かけて、頼んでいい相手を見極めている段階なんですね」。このように言い換えると、相手は「見極めている」という言葉に反応して、職場の空気について話し始めるかもしれません。質問を足さなくても、話は前に進みます。
やりすぎると不自然になる
気をつけたい点がいくつかあります。まず、単語をそのまま繰り返すだけのおうむ返しは、機械的に聞こえます。次に、感情の決めつけです。「それはつらかったですね」と先に言ってしまうと、相手は違うと思っても訂正しにくくなります。感情は相手自身の言葉に任せ、こちらは状況を言い換えるだけにとどめたほうが安全です。
頻度も大事です。毎回言い換えていると、相談室のような硬い空気になります。相手が長めに話したあとや、話題が切り替わる手前で、数回に一度使えば十分です。残りは普通の相槌で構いません。
文字、声、そして外国語での使い方
テキストのやりとりでは、言い換えは特に効きます。声も表情もない場所では、理解したという合図を言葉で作るしかないからです。相手の文の一部を引きながら、自分の解釈を短く添えると伝わります。音声やビデオでは、声の調子がすでに関心を伝えているので、言い換えはもっと短くて足ります。
外国語の練習をしている人にとっては、言い換えはそれ自体が練習になります。聞き取れたつもりの内容を自分の言葉で言い直せば、誤解があればその場で分かります。「つまり、〜ということですか」という型を一つ覚えておくだけで、分からないまま会話が進んでいく状況を減らせます。語彙を増やす練習としても、同じ意味を別の言い方で言い直す作業はかなり実用的です。